「ボクがギターをはじめるまで」の話 2
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前回のあらすじ
「俺はエレキギターを買う!」(SE:ドン!)
ギター購入資金のために貯金を決意をした。
――にもかかわらず、お小遣いはマンガ代に消えていた……。
次第にマンガで埋まっていく本棚、増えないギター資金……。
しかし、遅刻しそうなある朝、“運命”は突然に訪れた――。
「なん……だと……?」(SE:ドドドドド)
通学路にある、ゴミ捨て場。
――そこに、
“クラシックギター”がいた――。
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(SE:ゴゴゴゴゴゴ)
“ギター”だ。
“ギター”がある。
そう、思った。
ボクはエレキギターを買うために何か月もお小遣いを貯めていた。
――でも、あれはエレキギターじゃない。
ボクは、何かを迷っていた。
――今日はいつもより家を出るのが遅い。急がないと遅刻する。
なのに、足が動かない。目が離せない。
――ゴミ捨て場にあるのだからあれは“ゴミ”だ。
状態は悪くないように見える。綺麗だ。
――まさか、あの“ゴミ”を家に持って帰ろうとしているのか?
……ああ、そうだ。
ボクは、あの“ギター”を、“持ち去るか否か”を迷っている。
ボクはエレキギターが、喉から手が出るほど欲しいと思っている。
あれはエレキギターではないが、ギターではある。もし持ち去ることができれば――ベストではないが、ベターだ。そうだろう?
まずは、――落ち着こう。
自覚した。だからこそ、余裕ができる。
周囲を一瞥した。
交通量は、――多い。
なにしろ朝だ。通学・通勤の時間帯だ。
広いとは言えない道だが、急いでいるのだろう、車が次々と結構なスピードで通過していく。
それに、ボクのように遅刻しそうな同級生が、今にもあの曲がり角から走ってくるかもしれない。
顔見知りの近所のおばちゃんが、いつ家から出てくるかわからない。
人目に付かず、あの大きなギターを――当時のボクにはそう思えた――家まで持ち帰ることができるだろうか?
――難しい。
そもそも、ゴミ捨て場の“ゴミ”を勝手に持って行っていいのか? 犯罪じゃないのか?
――わからない。(当時のボクはそういった知識を持ち合わせてはいなかった。)
普通に買えばいいじゃないか。
――いつだ? 普通に買えるほどのお小遣いが用意できるのは?
だからこそ、迷っている。
ボクは、どうするべきなんだ?
ボクは――
【SELECT】
『うるせ〜〜!!!!! 知らね〜〜〜〜!!!! FINAL CHANCE ラッキー! ギターを持って帰るぜ!!』
⇒『人目も気になるし、そもそもゴミを持って帰っちゃダメだ! 諦めて、早く学校に向かおう!!』
『絢辻さんは裏表のない素敵な人です!』
「「人目も気になるし、そもそもゴミを持って帰っちゃダメだ! 諦めて、早く学校に向かおう!!」」
ボクは、再びウサイン・ボルトのランニングフォームで学校に向かった。
そして、次の曲が始まるのです!
つづく
22:00~