「ボクがギターをはじめるまで」の話 1
★
――あなたが小さい頃に聴いていた音楽はなに?
ボクが小さい頃に聴いていた音楽、といえば次の二つだった。
「テレビから流れてくる音楽」と「車で出かける際にカーオーディオで流す音楽」。
車で移動中、運転中の父が訊いてくる。
「音楽でも聴くか?」
「うん」
助手席のボクはCDをケースから出し、キラキラとした盤面をしばし見つめてから、カーオーディオに入れる。
車の中にあるのは「ザ・ベンチャーズ」のCD、1枚だけだった。
選 択 肢 な ど な い 。
「音楽でも聴くか?」じゃねぇええええ!!
ベンチャーズしかないんだから! 「ベンチャーズ、聴くか?」って訊けよ!!
説明しよう!
「ザ・ベンチャーズ」とは1960年頃から活動しているギター・インストゥルメンタル・バンドである。
後に父の車に「童謡」のCDが2枚追加されるが、それでも3分の1の確率でベンチャーズだ。
当時のボクにとって「音楽を聴く」とは、「『ベンチャーズ』か『童謡』を聴く」という意味だった。
テケテケ最高!!
ああ^~エレキギターのサウンド痺れるんじゃ^~
とにかく、幼少期のボクは、エレキギターの音を聴いて育ったのである。
そんなわけで、ボクがギターに興味を持ったきっかけは「ベンチャーズ」だ(と思っている)。
もしかしたら、テレビでよく流れていた「B'z」の影響もあったのかもしれない。
いずれにせよ、いつしか「エレキギターを弾いてみたい」と考えるようになったのは確かだ。
★
――ある年齢になった頃、エレキギターを買うべくお小遣いを貯め始めた。
新品のエレキギターは高価だったので、中古に狙いを定めて。
毎週のように、父にリサイクルショップに連れて行ってもらっていた。
どのお店に行っても、中古とはいえ、安くはなかった。
もっと、お小遣いを貯めなくてはならなかった。
……しかし、お小遣いはなかなか貯まらなかった。
なぜなら! 毎週! 週刊少年ジャンプを買っていたからである!!
週刊少年ジャンプはいいぞ。毎週200円台で楽しめる……。コスパ最高……。
お気に入りのマンガはコミックスも買わなきゃ……!
結局、ギター資金は5000円も貯まらなかったのである。
★
お小遣いは貯まらないまま、半年くらい経った頃。
秋と呼ぶにはあまりにも冬な季節。肌寒い朝。
「いっけな~い! 遅刻遅刻!」
朝食の納豆を「ねるねるねるね」を作るように丁寧に混ぜていたのが原因だ。\テーレッテレー/
学生にとって、遅刻は“罪-GUILTY-”である。
ボクは家を飛び出していた。
焦るボクは、図らずもウサイン・ボルトのランニングフォームで学校に向かっていた。
しかしすぐに、
「――ッ!!」
ボクの足は、止まった。
「相棒! 遅刻するぜ!」もう一人のボクが呼びかけてくる。(中二病)
だが、無視した。
無視、せざるを得なかった。
通い飽きた通学路だ。見慣れた道だ。いつもの風景だ。
なのに――
視線は、釘付けになっている。
口が、半開きになっていた。
――ドクンッ! 心臓が、跳ねた。
目の前に“現れた”のだ。
「なん……だと……?」(SE:ドドドドド)
通学路にある、ゴミ捨て場。
――そこに、
“クラシックギター”がいた――。
←To Be Continued
♪Yes / Roundabout